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「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」 [映画]

へーえ。よくできてる。雰囲気ある。
太宰の原作イメージをしっかり保ちつつ(と思うんだけどね、わたしは)、独自の解釈がなされて、しっかり芯のあるつくり。だと思う。
「ヴィヨンの妻」だけじゃなくって、他にも「燈籠」とか、いくつかの太宰作品のエピソードや言い回しが引用されてるらしいのですね。

→青空文庫「ヴィヨンの妻」 「燈籠」 「きりぎりす」

っていうか、原作は「人間失格」読んだときの印象も相まって、またもうマジなんだかギャグなんだかわからんキワキワ、どっちかつーとギャグ読みしてしまう嗜好もあってけろけろ笑いながら読んじゃったんだけども。

映画のさっちゃん、怖っ。怖いっつうか、疲労するというか、堪える。
なんつうか、堪らんよ、あーいう人。ほんっと、へとへとにまいると思う。傍にいたら生気を吸い取られそうな。比べて自分がどんどんダメになってくように思われるような、そーいう人。
ひたむきに尽くすとか、健気に支えるとか、苦労を耐え忍び、包み込む愛情とか、そういう湿り気満載な良妻賢母な人じゃないと思う。
あっけらかんと唯物というか即物。ひねてなくって動物に近い。天然で始末に負えない正しさ。
大谷は佐知を「からだがだるーくなるような素直さ」って言ってたけどナイスな言。これも太宰の小説にあるくだりなんすかね。あんまし読んでないからわかんないけど。

で、そーいう堪らん感じのさっちゃんの造形は、原作のイメージよりも人物の幅が感じられるように思えましたです。よく出来てる。

大谷が気の毒になりつつも、あんまし深刻に同情する気にはなんない(笑)。←この(笑)の感じは極個人的にすっごく太宰っぽい。はははは。





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コメント 2

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タニプロ

元々根岸吉太郎監督は「人間失格」をやりたかったんですが、企画頓挫したんだそうです。

そこを現代最高の脚本家のひとりとも言える田中陽造さんと組む形でこれに至ったそうな。そこにフジテレビが乗ってきたんだとか。

それで、かつて田中陽造さんと組んで名プロデューサーとして名をはせた荒戸源次郎さんが「人間失格」を監督したところに、日本映画ファンとしては、なにか因果を感じてます。ちなみに荒戸さんは太宰治文学は苦手らしいですけど(笑)

ちなみに映画監督では、どうやら岩井俊二監督が太宰ファンと言われてるそうですが、結局無かったですな。故市川準監督も太宰映画をやりたかったそうです。もう「人間失格」が出たので、いくら岩井俊二監督といっても映画化したくなったって協力者や出資者が出ないでしょう。
by タニプロ (2010-04-22 23:52) 

シロタ


タニプロさん、コメントありがとう。さすが、お詳しいですな。

太宰って人気あるんですねえ。
映像化したくなるような、そそられる要素があるんですかね。

わたしとしては、佐藤亜紀の「天使」を映画化してもらえんかなーと思ったりしますが、まあナイだろうなー。


by シロタ (2010-04-23 13:14) 

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