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「時計じかけのオレンジ」 [映画]




気持ち悪くて吐きそう。胃にクる。

画ヅラや映像の動きは気持ちよくって見惚れる。どことなく品があるほどに。音楽も鮮やか。
で、そういう、ビューティフルな描写自体がものすごく気持ち悪く感じるのは、いったいなんなのだろうなー。

主人公が暴力をふるうさま、さらにはそれを楽しむさま、そのことが気持ち悪いんじゃない。
そもそも暴力って楽しいもんだし。自分の力を存分にふるえるのは快楽でしょう。
そしてその暴力が、本人の意思や情動に基づかないやり方で無理やりに矯正を施される、まさに暴力が暴力で矯められる、それも別に気持ち悪くはない。
酷いことだけど。

その果てに、人として大切なものを失う主人公の姿。それこそはおぞましい。
狂ってる。それも、とても冷静に、理性的に狂ってる。
「狂人とは理性を失った人のことではない。理性以外のあらゆる物を失った人である」(G.K.チェスタトン著作集〈1〉正統とは何か (1973年))という、チェスタトンの言葉があるそうなんだけど、なんかそれを思い起こした。
自分が何を考えているのか何をしているのか、そしてそのことが他者にどのように影響するのか、きちんとわかっていて、なおかつ、そのことにいっさい何にも感じない、そんな酷さ。
とても惨いやり方で大量の人や生きものを殺傷する方法や兵器を考えたりつくったりする人のような、狂った賢さ。


そしてやっぱり、その描かれ方が華々しく気持ち悪い。
有毒の材料でこしらえられた、ものすごく美味しそうな料理、みたいな。
凄まじい悪臭がするのに、ぴかぴかにデコレートされ、慇懃な給仕にすまし顔で仰々しく供される、みたいな。
そして、有毒と知りながら、しかも有毒だからこそ、その皿を美味そうと思ってしまうことが、そういう自分のことこそが、激しく気持ち悪い。







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