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「そこのみにて光輝く」 [映画]

→「そこのみにて光輝く」公式webサイト(音が出ます)

 観た。はー。観たよ。

 ていうかしばらくこのブログ放ったらかしでしたが、相変わらずあれこれ観たり聴いたり読んだりごはんつくったりしてました&しています。
 なんかあんまり書いたり発表したりする気分じゃなかったもんで。


 で、「そこのみにて…」。

 綾野剛目当てで観に行ったんでした。
 ここんとこドラマ「最高の離婚」「空飛ぶ広報室」「イヌゴエ」「S-最後の警官-」「闇金ウシジマくん(season2)」「ロング・グッドバイ」、映画「クローズゼロⅡ」「シュアリーサムデイ」「渋谷」「孤独な惑星」「GANTZ PERFECT ANSWER」「新しい靴を買わなくちゃ」など立て続けに観て、どんだけ綾野剛視聴強化月間なのか。
(気になる人強化月間視聴は今までにも、イーサン・ホークやロビン・ウィリアムス、レオナルド・ディカプリオ、アントニオ・バンデラス、松田龍平とかでもやらかしてる。自分じゃ選ばない雰囲気の作品とかも観れてなかなかおもしろいです<強化月間)

 しかし当人の実力もさることながら、綾野剛のマネージャーってすげえ凄腕なんじゃないかな。こんだけの仕事さばくのってすごくない?


 で、なかなか話がすすまないけど、「そこのみにて光輝く」。

 いい映画でした。
 函館の街の情景が活きてて、海辺とか北海道弁とか、その土地に根ざしているものが全編に濃厚に漂ってて、その雰囲気だけで、うおぅ、って気圧される。
 特に北海道弁がクる。
「やめれや」「わかんないしょ」「なしたの」「なんもなんも」「わやだべ」
 一応わたしネイティブだし、そんなに強烈な印象じゃない類の方言だと思ってたけど、こうして街の情景や人々の営みを映しながら話されると、じわじわ滲むようにキいてくる。言葉が生きてる感じ。

 お話は、あまり好きな類の話じゃない。
 底辺とか貧乏とか、行き詰まってる人の話はキホン嫌い。妙にびちょっと情緒的にヒサンだったり、貧乏でも明るく前向き・心持ち次第でシアワセ☆とかいう欺瞞だったり、的な描かれ方が多い気がして、そういうの嫌い。
 でも「そこのみにて光輝く」は、そういうのじゃなかった。なんか普通に行き詰まってた。
 停滞と閉塞に膿んで、うんざりして徹底的に行き詰まってんだけど、そういうのにいちいち嘆いてたら生きていかれないので、それを受け容れて、ていうか受け容れざるを得ず、普通に日々を過ごしている。

 拓児/菅田将暉がすごくイイ。素直で懐っこくてちょっとバカで、いちいち危なっかしくて目が離せない。
 にかーっと音がするみたいな全開の笑顔とか、何故か見てる方が泣けてきそうな、何かを捨てきってて、奇跡みたいな笑顔。
 このコが開けっぴろげに達夫/綾野剛に懐いてちょろちょろすんのがすごく愛しい風景に見える。

 千夏/池脇千鶴もイイ。この人、角度によって鼻の下のすじとかほうれい線が目立ち、鼻から口元のあたりに、幼いような、獣っぽいような、妙に腥(なまぐさ)い感じが漂う気がするんだけど、それがイイ。肉感的な二の腕や太股ももったりやさぐれててイイ。

 達夫/綾野剛もやっぱりイイ。演じてる、とは思えなかった。そもそも綾野剛ってこういう人なんじゃないか、とか思うくらい、達夫っていう人がそこに居る感じ。
 演じてる役者のことを“中の人”って言う言い回しがあるけど、その例で言うなら、中の人と外側に被ってる役柄の皮が限りなく薄い感じ。もしくは、ところどころ剥けて、中の人の素を感じてしまうような。

 ていうかこれ、役者みんなすごいね。中島/高橋和也の脂っこさとか、松本/火野正平の飄々とか、母ちゃん/伊佐山ひろ子の退廃な感じとか、隙のなさというか固め方がすごい。ぎっちり詰まってる感じ。

 画ヅラとして、やたらに人物が接写される場面が印象に残ってて、それによって、表情のみならず、肌や髪や汗の質感とか、肉体や身体感覚がえらい迫力だった。むわっと匂ってくるみたいな感じが不快感すれすれの迫り方。
 千夏と達夫のセックスシーンとか、特にそれを感じた。すごく生々しい。けど、露悪的ではない。エロティックなんだけど、どこか淡々としてる。
 お互いに、相手を思う、求める気持ちにあふれてるんだけど、それよりも、ただただ、圧倒的な肉体の存在感。
 綾野剛の背中、池脇千鶴の腕と足。ひたすらに、互いの肌を探り合う、真剣に作業してるみたいな男女。みたいに見えた。


 全体に、すごく濃厚で濃密でぎゅうぎゅうに詰まってるのに、どこか乾いて突き放してて、ある部分であっけなく逃がしてる感じがして、この雰囲気好き。

 ラストシーンはハッピーエンドじゃないけど悲惨なだけでもない。希望が滲むってこともないんだけど、突き抜けたような諦観と達観、みたいな。
 タイトルの通り、ただその瞬間だけがある、と思えて、うん、いい映画だったなー、とか思った。





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