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「シロタ家の20世紀」 [映画]

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「シロタ家の20世紀」公式webサイト

ウクライナにルーツをもつユダヤ人一家、シロタ家の人々の足跡を追いつつ、20世紀を概観するドキュメンタリー。

ポグロム(迫害)とディアスポラ(離散)にさらされる一家の消息を丁寧に追ってゆく。
ウクライナのカミェニッツ・ポドルスキ、フランスはパリ、ドランシー、ノルマンディー、ポーランドはワルシャワ、アウシュヴィッツ、スペインのカナリア諸島と、せっせとロケ取材を敢行しているのは感嘆に値する。資料性に優れ、大変な仕事だ。

とはいえ、全体的にはなんとなく散漫な印象をもった。
脈絡なくあちこちに飛ぶ感じがする。

また、散り散りになる一家を追う線と、大戦の歴史を追う線とが、主観的で感傷的な語りによって癒着していて、いちいち引っかかる。
シロタ一家に随分肩入れしていて、しかもなんかこう、イワナミつーかアサヒシンブンつーかアカハタつーか、ああいう感じのフレーバー。いや、主義主張をメッセージとして込めるのは結構というか当然なんだけれども。
彼らがどういう扱いを受けたかということと、製作者側がそのことにどういう感慨を持ったかということは、もう少し慎重に分けて示してほしかった。
ノルマンディー上陸作戦のくだりなんか、ポーランド軍に入れ込みすぎ。
個人的に、勲章をたんまりくっつけた退役軍人がずらーっと並んで誇らしげにしている様はどうにも受け付けない。
ラストシーンに位置づけられたスペインのグラン・カナリア島の日本国憲法「9条の碑」(そんなんあるんだーていう“へぇ”感はあるけど)のシーンも、なんだか唐突な感じもした。

あれこれ文句はつけつつ。
20世紀の来し方を、ある一家の姿を借りて振り返ることで、“今”に連なっていることを強く実感する。
歴史とは、年号にマーカーで線を引いて理解できるようなものではない。
今、現在のわたしたちに確実に繋がっている。歴史を知るということはその繋がりを読み解いてゆくことなのだ。

そして言うまでもなく、現在のわたしたちは未来に繋がってゆく。
未来の子どもたちがその繋がりを追うとき、彼らは苦笑とともにわたしたち旧人類の小ささ愚かさを知るだろう。
だとしても、せめても希望が持てる事柄を残したいものだ、と思うのです。

映画に登場する人物の関連書籍



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