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「テルミン」 [映画]

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嘘みたい。

これって、ドキュメンタリー風に仕上げたフィクションなんじゃないの? と、疑ってしまったくらい奇想天外な話です。
仕組まれているかのようにドラマティック。けど、こんな話を仕組むのは絶対無理です。

テルミンとは、世界初の電子楽器の名称であり、また、それを発明したレフ・セルゲイヴィッチ・テルミン博士のこと。
楽器のテルミンは、四角い箱からアンテナが二本突き出ていて、そのアンテナの間で手を動かすと音がでる仕組みです。その楽器自体が珍しいのと、その誕生から普及の過程でのエピソードがとてもおもしろい。この映画が公開されてから、テルミンの販売台数が飛躍的に延びたそうです。そりゃそうだな、やってみたくなるもん。

かててくわえて、テルミン博士の生涯がとんでもない。ニューヨークで楽器テルミンの普及とさらなる改良などを研究していたかと思ったら、唐突に失踪。その後、約50年間行方知れず。冷戦終結後、東側の情報がボチボチ入ってくるようになったところで、消息が確認され、再びアメリカに姿を表す。

そして、博士の愛弟子、クララ・ロックモアと半世紀ぶりに再会を果たすのですが、なんというか、言葉が出ません、このシーンは。
50年! 人が生きて、歳をとって、いろいろな経験を身のうちに積み重ねている、その重み。
同じバスに乗り合わせてたら「あ、どうぞ」ってフツーに席を譲って、ちょっといいことした気になっちゃうようなじいちゃんが、とんでもなく数奇な人生を経ているのだ。

数奇じゃない人生なんてないのだろうけれど。
ひとりひとり、それぞれの歴史を経て歳をとってゆくのだから、他人と比べようもないのだけれど。
人の重ねる歴史の重みを、こんなにリアルに感じたことはなかった。

ラストシーン、まぶしい繁華街の中をふりかえるテルミン博士とクララ。
本当に、会えて、よかった。
50年、長かったね。
いろいろ、あったね。

奇跡のような映画です。





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