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「Ductia」カテリーナ古楽合奏団 [音楽]

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カテリーナ古楽合奏団のwebサイト

大学んとき、ってももう10年以上むかしの話だけども、民俗学&文化人類学の課外講座の体裁でコンサートが行われて、初めて古楽器の演奏を見聞きしたのでした。おもしろかったー。

とにかく楽器が愛らしく素敵なのです。
カテリーナ古楽合奏団のwebサイトで楽器の部屋を覗くとくわしく解説されてます。演奏写真もあったりして楽しい。お薦め。

なんていうか、それぞれの楽器に人格が感じられるような、人懐っこい姿をしてる。洗練されているとは言い難い。無駄な機構とか風変わりな形態とか、近代合理化精神からすれば“改良”の余地が残されまくっている未完の楽器ってことになるんだろうと思う。
実際、この楽器たちは温度とか湿度変化の影響を受けやすく、すんごく安定しない気難しいところがあるそうで、コンサートが行われたのは夏だったのだけど楽器への影響を考慮して冷房を入れなかった。

誰が奏してもある程度正確な音がきちんと発せられるお行儀のいい楽器ではなくって、奏者の腕前や調子の良し悪しによって著しく音程や音色を変える。
ある意味、有機的な感覚とも言えるような楽器と奏者との関係。

その音色はどこか鄙びたような、懐かしいような感じもして、すんなり耳馴染みがいい。聴く者に緊張を与えず、聴き疲れない。どこかで聴いたことがあるような、くったり体のかたちに着慣れた衣類みたいな。

演奏される曲目は中世ヨーロッパ(12世紀〜17世紀、フランスやイングランドやドイツやさまざまな地域)の楽曲で、これまた親しみやすく懐かしい感じ。どの曲もシンプルな旋律が繰り返されるシンプルなつくり。その分、楽器の音色そのものを素朴に味わえる。ほとんどの曲が2分程度の短い曲なんだけど、どれもずっと繰り返して続けられるような広がりのある曲。
中世の音楽の再現っていう訳ではなく、むしろ特定の解釈にこだわらず、純粋に楽曲の魅力を引き出そうという試みであるらしい。
たぶん楽器が一番気持ちよい音を出せるように演奏したらこうなった、って感じなんじゃないかと思う。

古いんだけれども新しい。
永遠に未完成な楽器と音楽。
ちょっとよいです。

1. 三声のモテット Balam 作者不詳(13c. France)
とろっとつやのある笛の音が官能的な、出だしのご挨拶って感じの曲。つかわれている楽器はツィンクてやつかクルムホルンか?わかんないけどCDジャケットの楽器写真を眺めて想像しながら聴くも楽し。

2. ドゥクチア Ductia 作者不詳(13c. England)
カヌーン(推定)の華やかな弦の音、同じメロディをリコーダーが追う。シンプルな旋律を音色や装飾を違えながら繰り返す。軽やかでかわいい。

3. エスタンピー Estampie 作者不詳(13c. England)
ドゥクチアからつながって始まる感じの出だし。リコーダーの澄んだ音色がキレイで聴き惚れる。トレブルヴィオール(ヴァイオリンの祖先ぽい擦弦楽器)の不協和音ぽい鈍くさい音が妙に味わいがあって鄙びてていい。輪になって踊りたくなる感じの賑やかさ。

4. ショーム吹きの踊りHoboecken Dans ティールマン・スザート(16c. Flanders)
金属的なプサルテリー(推定)の弦の音で涼しげに始まり、ショームの鄙びて土臭い旋律が繰り返される。ショームはオーボエみたいなリードで音を出す管楽器の祖先なんだと思うけど、なんかアラビアとか中近東の匂いも感じられるような音色。なんとなくものがなしい旋律があたたかみのあるショームの音色と相まって味わい深い。

5. トリスターナ Lamento di Tristano 作者不詳(14c. Italy)
どことなく中近東風な。粘っこいドラムの響き。

6. フォンタナ Tre Fontane 作者不詳(14c. Italy)
賑やかでせわしない、ヒバリみたいな感じのリコーダーの旋律に、ドゥンベクていう太鼓のリズムが疾走感。楽器は少ないっぽいけど音が足りない感じはない。即興っぽい臨場感のある曲。

7. 輝く星よ Lucente Stella 作者不詳(14c. Italy)
トランペットみたいなホルンみたいな、豊かに広がりのある管楽器(ツィンク?)の音色が印象的な楽曲。渋い。

8. ロンド 「なぜ」 Pour quoy ティールマン・スザート(16c. Flanders)
繊細で可憐な弦の音がたまらん感じにかわいらしい。でもって、ちょっと切なげな感じもありつつ。オルゴールみたいで叙情的なポロポロさ。かっわいい。

9. 五月の日々 Kalenda maya ランボー・ド・ヴァケイラス(12c. France)
律儀な感じで刻まれる3拍子のリズムにリコーダーとショームの旋律とハーモニー、合間にジューズハープ(口琴の一種だと思う)のポヨヨ〜ンがのどかに可笑しい。風景が浮かんでくるような情景的な曲。

10. ブルゴーニュのブランル Bransle de bourgone クロード・ジェルヴェーズ(16c. France)
バグパイプの生真面目な安定感のある旋律から始まり、各種フルートやリコーダーやショームが旋律を追いかけっこ。途中から存在感のある打楽器も加わり、躍動感に満ちてはじける瑞々しい楽曲。

11. ディンディリン・ ディンディリン Dindirin Dindirin 作者不詳(16c. Spain)
夜店で売ってる風船のおもちゃみたいな、カズーみたいなブーブーいう音。これなんだろう。リードで鳴らす管楽器っぽいんだけどなあ。クルムホルンかなあ。

12. プッタネラ Putta Nera Ballo Furiano ジョルジョ・マイネリオ(17c. Italy)
これもやっぱりおもちゃくさいブーブー音。やっぱりクルムホルンか。ショームも加わり、軽快なモロッコドラムのリズムがポコポコかわいい。くるくるまわって踊りたくなる感じの軽やかさ。

13. ブランル 1 Blansle クロード・ジェルヴェーズ(16c. France)
リズミカルに刻まれるリコーダーの旋律がかわいい。思わず笑みがこぼれる感じの可愛らしさ。

14. ブランル 2 Blansle クロード・ジェルヴェーズ(16c. France)
ツィンクの柔らかく太い音で始まり、徐々に楽器が増えていく。 ブランル 1とは違う旋律だけど、リズムは似てる。ステップを踏むような軽やかさ。ブランルはフランス起源のダンスだそうな。

15. 愛する人よ Ahi Amors 作者不詳(12c. France)
弦楽器中心の繊細な響きあい。ゆったりしたリズムを彩るようにさまざまな音色の弦がはじかれ、擦られ、華やかで重層的なハーモニーが快い。たゆたうような3拍子にうっとり。

16. 花より美しきものは Plus Belle Que Flor Est 作者不詳(13c. France)
はかなく掠れるようなパンパイプの音色が切ない。

17. 森の小鳥 Rossignolet au Bois 作者不詳(Flanders)
甘く官能的な擦弦楽器の旋律に、金属的な撥弦が重なり、さらに濃密な太い擦弦。人の声に似たゲムスホルン(推定)の音にどきっとさせられる。もったり粘りのきいた濃密さのある楽曲。森の小鳥っていうよりか、暗い森とか夜をイメージさせられる。

18. アルマンド Allemande ヨハン・ヘルマン・シャイン(17c. Germany)
リコーダーとショームの掛け合いが饒舌。モロッコドラムの規則正しいリズムに安心して踊るような二対の笛。折り目正しく上品なお嬢さんて感じのきりっとした楽曲。

19. ラ・マンフレディーナ La Manfredina 作者不詳(14c.Italy)
ゴシックハープの金属的な弦の音がザランザランかき鳴らされる。中近東っぽい和音と粘り気のある旋律がちょっとあやしげ。スタッカートを利かせたキレのよさが勇ましい感じもあり。おもしろい曲。

20. 優しく美しい乙女 Douce Dame Jolie ギョーム・ド・マショー(14c. France)
ゲムスホルン、クルムホルン、ショーム、トレブルヴィオール、サズ、ポルタティブオルガン、タンバリン、ダフ、と楽器の揃えが豊富で厚みのある音。ゆったり→弾むような躍動感と、動きのある旋律が豊穣。




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