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「落下の王国」 [映画]

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原題は The Fall。
The Cell の次は The Fall。韻を踏んでるのかな。邦題は「落下の王国」、別にThe Fallのままでもよかったと思うけど。
Fallは単に落下って意味じゃない気がするので。



ロイ青年は映画のスタント撮影でFallし、少女アレクサンドリアはオレンジの樹からFall、少女がFallした手紙を拾ったロイ青年が、少女をFallするために物語を語り聞かせ、ふたりは物語世界へFall。

ザ・セルで堪能した、カリッカリにエッジの立った、クリアーなキメキメ映像ふたたび。
くっきりはっきりシャープで気持ちいいくらいの割り切り感。深みとか質感を深追いするよりもフォルムとかモーション優先て感じの。
世界遺産とか有名過ぎるロケーションって観光地PRなお土産映像か、文化アーカイブ的なドキュメンタリー臭さが出ちゃいがちだと思うんだけど、ユネスコ臭皆無のありがたくなさで絵本みたいにハマってる。エラい。

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美麗映像なり。眼福眼福。

お話的には、物語世界から現実へアプローチして、現実での問題解決がはかられるっていうつくり。仕掛けはザ・セルと共通するところもあるのかも。
ロイの語る物語世界は現実と相関して重なりあい、ザ・セルで描かれる精神世界と同じ位置づけなんだと思う。

で、お話の出来としては、なんか惜しい気がする。
現実と物語世界の重なり具合とか途中まではわくわくできた。ロイがつくった世界にアレクサンドリアが入り込んで、彼女の父親を襲った出来事が物語世界に関わってくるあたりには興奮。そうきたかー、て。つくり話の物語世界に現実の要素が入り込んで、どんどん重なりが強く密になる。

そうなってくると、ただのお話ではなくなって、ロイとアレクサンドリアが物語を生きはじめていく描写ってのがキモだと思うんだけども、これがなんとも弱い。

アレクの事故(これまた薬棚からFall)から、ロイが自棄になってお話を壊し始めるのがなんか今イチ、乱暴でやっつけなテキトー感。
そりゃ自棄になってるからなんだろうけど、お話を壊すなら世界観丸ごと崩壊するみたいな描写、それこそ幻想的にあっけないほどがらがら崩れていくような不条理な崩壊(その際、黒いバケツかぶったみたいな兵隊が虫みたいに増殖してざわざわ画面を占めたりすると不気味怖くてよさそうだ。)ていう方が物語世界の儚さ、もろさみたいなんを感じられてよかった気がするし、物語世界に居るロイとアレクの危機的状況がよりシビアに際立つんじゃないかと思った。

で、とうとう宿敵オウディアス総督=恋敵の人気俳優と相対した黒山賊=ロイの場面は、現実世界と物語世界の重なりがもっとも強いクライマックスなんだけど、ロイの葛藤ぶりが割と薄くって印象が小さめ。たたかいも地味目。オウディアスの最期はなんじゃそれって感じの要らなさ加減。

だいたいが、ロイがたたかうべき相手というのはそもそも人気俳優なんかじゃないだろうよ、って気もする。すんごいベタだけど、オウディアス=ロイで、ヘタレな自分自身とたたかい、過去をふっきって現実世界に踏み出す、みたいなオチの方がまとまりよさそう。

エヴリン姫は何しに出てきたんだかわからん。ていうか山賊もねえ、一度は惚れた女なら最後まで敬意を払えよ。そんなんだから余所の男んところに去られるんじゃないのか。


やっぱりなんだか惜しいなあ。
ここまで映像づくりに凝ってるんだから、お話としても、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」の域にまで物語の力を発揮させてほしかった。






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