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「ミツバチのささやき」 [映画]



早稲田松竹にて二本立て、「エル・スール」から続けて観たので、疲れちゃったかな。コンディションが今イチ。満腹でこれ以上食えません的に、あんま入って来なかった。残念。

スペイン内乱の時代を背景に、少女アナの視点で小さな村の生活や出来事を見つめる。
他愛ない子どもの世界ってふうにも観られるし、内乱と絡んで深読みすることもできそう。
劇中映画の中でフランケンシュタインに殺された女の子のことを訝しむアナの台詞、「どうしてあの子は殺されたの?」みたいな問いかけとか、内乱で死んだ/殺された人たちのことに重ねたりもできるかも。そもそも“フランケンシュタイン”の存在そのものが、人間の驕りによって生み出されたコントロール不能の暴力ってふうにも観れるだろうし。
amazonのレビューとか映画タイトルでググると、いろいろと読解や解釈が披露されてる。すごい熱狂的なファンが居るんだなー。へえー。

このアナって子の眼差しがとても印象的。
無垢とか純粋とか使い古された言い回しをしちゃうとヤスくなっちゃって嫌なんだけど、なんだろうな、本当にじーっと視てるなーっていう目。興味とか関心とかが全部視線になったような、全身の存在が全部眼差しに宿ってるみたいな。
でもって佇まいが自然。芝居って感じがしない。

また、今イチなコンディションとは言え、カッチリ構築された画は、いちいち身体に迫ってくる、体感的にぎゅーっとクることでしたよ。

テレサが自転車で上手から下手へ移動、駅舎に自転車を立てかけて止め、駅のホームに立つ、奥手の遠方から迫ってくる汽車が駅に乗り入れる場面とか、なんてことない場面なのにすごく印象に残る。構図のリズムが動きのリズムと相まって、キいてる。
キノコ採るとこの林の画ヅラの、木々の空間の抜け方とか、構図がかっこいいなーと思った。
古井戸のある廃屋の風景やくねった道の続いていく、はろばろに広がりのある遠景なんか、大好物。

あと、真っ暗な夜から転じて明るい日差しを感じさせたり、明暗の切り替え、その緩急に音楽的なリズムが意識されてたりすんのかなー、とかも思った。
実をいうと、場面が切り替わる間隔が緩慢ていうかいちいち遅く感じてしまって、眠気がさしてキツかったんだけど、それって上述の理由で草臥れてたせいか。
ともあれリズムが合わない、って感じがすんごくした。

そんなんで個人的には「エル・スール」の方が気に入ったんだけど、「ミツバチ…」もまた機会があったら観てみたいな。

<追記 '09.11.25
「エル・スール」で語られるところの“南”って「ミツバチのささやき」の舞台なのかなー、と思った。
「エル…」で手紙を受け取る父ちゃんと「ミツバチ…」で手紙を出すテレサが勝手に符号しちゃったもので思い至った訳なんだけど。
「エル…」で父ちゃんを訪ねてくる乳母、「ミツバチ…」の乳母の名前は“ミラグロス”、同じ名前だったりするし。

この二作は相関してたりするのか。ともあれ、一作ずつ観るのとは随分違った印象を受けそうな気がするんで、併映で観られてよかったかな。疲れたけど。



 

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コメント 3

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yadonisi

ご無沙汰しております。
体調が優れぬ状態での鑑賞でしたのに、流石、着眼点がスルドイっすね!

>内乱と絡んで深読みすることもできそう。

まさにその通りだと思います。
幼女の空想と現実の中に、スペインの歴史や精神性なんかを盛り込んでるらしいです(モノの本の受け売りですが(苦笑))

僕としては、この作品は“映画好き”の琴線に触れる映画だと思いました。
やっぱ、映画の世界と現実との境界線が曖昧になって、やがて混濁してしまう感じの内容が、たまらないです。

何度も鑑賞する価値アリだと思います。
あまり説明しない象徴的なイメージやら、“静寂が美しい”という映像世界とか、観るたびに新たな発見や感動がある・・・らしいです(また、受け売り(笑))

もうね、かなり昔に一度見たきりなので、ほとんど覚えていない(涙)
また観たいとずっと思っているのだけど、近所のレンタル店には何処にも置いてない・・・
劇場での鑑賞って・・・すごく羨ましいです。
by yadonisi (2009-11-24 19:28) 

お鈴

この映画途中までしか観てないのですが、
(けして面白くなかったのではなく、時間の問題で。。)
あの女の子がベッドで小声で話しかけるシーンと
シロタさんが描かれている、
自転車追って〜汽車がはいってくるワンカットのシーンは凄かったです。
全編観なくちゃ。。

あと、こうゆう映画っていい意味で眠くなるので、
ほんとにちゃんと観た。と思えるまで3回くらいかかります。苦笑
by お鈴 (2009-11-24 21:44) 

シロタ


>yadonisiさん

いらっさいましー。コメントありがとうございます。

いやいや、体調を理由に予防線張ってみまちた(笑)が、深読みていうほどでもなく明らかに暗喩を読み取らせるつくりにはなってるんだと思うんです。
わざわざ年号(1940年頃ていう年自体がスペイン人にとっては特別に意味がある訳でしょう)をはっきり示してみたり、劇中映画の監督挨拶部分を延々ひっぱって“人造人間”に対する批判を仄めかしてみたり、いろいろ仕掛けてある。
ただそれが不自然さがなく、説明的じゃなくって、スムーズにすんなりお話に噛んでるんですよね。

とはいえ、そういう政治的な読み解きが勝ち過ぎる観方は些か野暮だと思いましたですね。
少女アナの眼差し、子どもの残酷さとか死に近しい世界が、甘ったるくない、むしろ冷徹な詩情で描写されているところに痺れますのです。

>映画の世界と現実との境界線が曖昧になって、やがて混濁してしまう感じ

これが、すんごくリアルなんですよね。そうだった、子どもの頃って夢と現実の区別がつかなくって、すごく怖かった。あの、区別がつかない感じ。

一回観て“消費”しちゃう映画ではないですよね。観るほどにおいしいスルメ映画。
それにしてもDVDの画質が今ひとつらしくって、amazon荒れてますな(笑)。つか、なんですかねこのお値段は(驚)!



>お鈴ちゃん

こんにちは。コメントありがとう。

ねー、けして退屈してる訳じゃないのに眠くなるんですよね。困ったもんです。
ただこの映画の場合、少女アナの夢うつつな感覚と重なる感じもして、悪くないかも。
夢だったのかな? ていう後味が結構ハマる感じ(笑)。で、もっかい観てみよう、ってなるもんね。

お鈴ちゃんの感想も聞いてみたいです。機会があったら観てみてね。


by シロタ (2009-11-25 10:25) 

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