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「トイストーリー3」 [映画]



大蟻食様の大絶賛に推されて観に行きました、吹き替え・3D上映。
そもそもがディズニーのメリケンなバタくさいキャラクターにてんで魅力を感じない上に、フルCG映像も興味がなく、正直言ってなめてたもんで、これが初ピクサー体験ということに。
いや、ほんとコレすごいですな! 3D上映も「アバター」のときよりスムーズで、疲れずに無理なく堪能できました。

フルCG映像ちゅーのは、アニメでもなく実写でもない、独特な世界なんですな。
‘80年代くらいかな、ひところ大流行りした、写真みたいにリアルなハイパーリアリズム絵画・イラストレーションってあったでしょう、ああいう感じの妙なリアリズム。リアルなリアリティ、みたいな。
CGだと思って観てんだけど、ウッディやバズたちはおもちゃっていう素材感がCGの質感にフィットしまくってて、実写みたいなリアルに感じる。絵柄だけじゃなくって動きもいかにもおもちゃっぽく、兵隊人形のちこちこ歩きやバービーのぎこちない動きなんかもすんごくリアル。CGだからってバービーを人間みたいに動かしたりはせず、あくまでおもちゃっぽい動きに徹してるんですな。
家屋とか草木とかのモノの質感、素材感もえらいことリアル。それも、本物より本物っぽい、上述のハイパーリアリズム絵画的なリアルっていうかね。
一方で、アンディや子どもたち人間が出てくると、おもちゃたちの世界との差異がガクッと強調されて、ああこのコたちおもちゃだったっけ、CGだったんだっけ、て認識を新たにさせられる。
それにしても、「トイストーリー1」の段階での話だけど、CGっていう映像技法を選ぶにあたって、おもちゃを題材に選ぶ戦略が見事過ぎ。

お話的にも堪能。
ディズニーでピクサーな訳だからめでたしめでたしに決まってる訳で、安心して観てられるはずなんだけど、結構しっかりドキドキハラハラさせられる。いや、安心して観てられるからこそ、なのかな。存分にドキハラを堪能できるっていうか。
それぞれのキャラクターのエピソードとか見せ場的な活躍もお楽しみ。ウッディのグライダー滑空はそりゃもう気持ちよいし、バズのリセット変貌からスペイン語バージョンのムーチャス アモールっぷりは笑える。ポテトヘッドの活躍が意外とキた。目鼻手足が外せて使えるとは便利なやつ。ロッツォのエピソードは物悲しい上に、身に覚えがないでもないので罪悪感に胸が痛む。
個人的にはケンのキャラ設計をおもしろがってた。女の子のおもちゃの添え物的扱いされて憤慨してみたり、服に興味がない他のおもちゃたちを嘆いてみたり(笑)。ファッションショーのとこは腹抱えて笑った。ケン最高。

「1」「2」も借りてきて一気観、これもおもしろかった。
「3」は「1」との関連というか、繋がりが意識されてんですかね。「3」のラストの青空、浮かぶ雲の形は、「1」のアンディの子ども部屋の壁紙の模様なんすね。
アンディは子ども部屋を出たよ。現実の空の下に巣立っていったよ、っていう。「1」のアンディの子ども時代まで長い射程をもつ「さよなら」の空。(そして、ボニーとの新たな子ども部屋の空、なのかも?)
「3」の(ネタバレ防止のため文字色反転)焼却炉からウッディたちを救うクレーンは、「1」のクレーンゲームで異星人たちが崇めていた”選ぶ手”で、しかも選ばれる側だった当の異星人たちが操作する側になってる。
他にもオマージュとかパロディとか仕掛けがあるかもしんない。DVDになったらもっかい観てみよう。

シリーズ全体を通して満ち満ちているのは、「子どもを楽しませてこそおもちゃ」っていう、おもちゃのアイデンティティと誇り。そして何より、子どもを幸せにする喜び。
「1」では、スペースレンジャーではない自分に落ち込むバズに、ウッディは、おもちゃだからこそアンディを楽しませることができる、君は素晴らしい、と言い、「2」では好事家のコレクションになるよりも、子どもの遊び相手として楽しませる喜びを選ぶ。
「3」では、大人になっておもちゃを必要としなくなったアンディに別れを告げる。いっしょに遊んだ子ども時代の日々を大切にするからこそ、成長したアンディに執着しない。そしてまた新たな子どもを幸せにするために、ウッディたちも出発するわけですよな。

この、「子どもを楽しませてこそ」っていうのは、たぶんディズニー、ピクサーの姿勢でもある。
ディズニーの肝の据わりっぷりは、「魔法にかけられて」で、自虐的に自己言及しつつも、オチはあくまでも夢の世界なめでたしめでたしに落とし込むチカラワザにも顕れる。あれはもう、いっそすがすがしく感心してしまった。
どこまでも子どもに向けられる眼差し、そのこだわりはハンパじゃないですね。



ところで、「借りぐらしのアリエッティ」と比べても、その陽性の力強さが際立つように思いましたです。
いずれも人間に比べてちっさい縮尺で、人間に見られてはいけない、人間と直接に関わらない(アリエッティはそこ越えちゃったから去らなくてはならなくなった)。
アリエッティたちの、衰退と滅びを予感させつつも生きていこうとする儚い強さと、おもちゃたちの、子どもたちに忘れられるかもしれなくっても信じて共に過ごそうとする明朗さの対比がおもしろいなー、と思いましたです。
同時に、ジブリとピクサーの対比としても見られるのかも。


つーかさー。NHKの番組で、「アリエッティ」製作の舞台裏ドキュメンタリやってたけど、いやもー満身創痍でツラそうで、ヒトゴトながら心配になったんですけどどうなのそれ。番組的に苦労話のほうがウケるとか、苦労強調なつくりを疑ってみるけど、それにしても、ツラそう過ぎる。魅力的な表現を生み出そうとする、ドキドキ感もわくわく感もまるっきり伝わってこなくってさ。いやそういう喜び皆無なわけはなかろうが、それにしてもヤバ過ぎだろう。

「笑ってコラえて!」で、「トイストーリー3」のアートディレクター、堤大介さんがニコニコへらへら制作の裏側を語っていたのと対照的。いやこれも「笑ってコラえて!」っていうへらへら番組だったからかもしんないけど、でもすっごい楽しそうでさー。お絵描き大好き、おもしろいでしょおーえっへん、って感じだった。でホントえっへん、な出来だよね。ピクサーすげえわ。








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タニプロ

「トイ・ストーリー3」「カラフル」「ヒックとドラゴン」「プリンセスと魔法のキス」

別にアニメーション大好きってわけでもないのに、僕が今2010年ベストテン作ったら、アニメーションがこんなにランクインしてしまいます(笑)「借りぐらしのアリエッティ」もあったし・・
そのぐらいアニメの当たり年です。

なんか興味あるので未見の作品があったら是非。


by タニプロ (2010-09-06 00:45) 

シロタ


昨日駆け込みで「ヒックとドラゴン」観ましたよ。いやあ飛んだ飛んだ、気持ちよかった。

そういや先日「マイマイ新子と千年の魔法」観ましたよ。
タイトルの印象から、もっとぶっとんでファンタジーなのかと思ってましたけど、土地に根ざした土着とか時代の風俗とかが丁寧に描かれていて、ちょっと驚きました。
なんつーかね、地に足の着いた描写と言うか、体温がある、ちゃんと体の重さがある浮ついてなさ、みたいな。
実直なつくりですよね。よかったです。


アニメの評判いいんですね。出不精であんまり新作を観る方じゃないんですけど、今年は「アリエッティ」「トイ3」「ヒック」と三作も劇場鑑賞に至ってますよ。ほんと、アニメばっかりだ。


またよさげなのあったらお奨めして下さい。


by シロタ (2010-09-06 20:37) 

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