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「かもめ食堂」 [映画]



この感じは、クラフトの味わいだなあ、と思った。
しかも、趣味のクラフトではなく、実用のそれ。
漁師のおかみさんが夫や息子の為に編むアランニット、毎日使う刺し子の布巾、古い布地を活かして使う為のパッチワーク。
誤解をおそれずに言えば、女の手仕事というやつ。

そういうクラフトにはいやらしいエゴがない。そのくせ、誰それがつくったんだなあ、なんだかあの人らしいや、と、人柄がにじみ出る。
意図してつくろうと思ってもできない。力みのない、淡々とした仕事がつくり出す世界。

そういうふうにつくられたものにはしばしば魔法が訪れる。
たまたま糸が途切れたので糸を変えた。たまたま布地が足りなかったので継ぎ足した。たまたま綻びがあったので繕った。
そういうことが何故か積み重なって、できあがったときに不思議な模様や色合いが浮かび上がったりする。偶然にしては出来すぎだけれど、偶然でしか表れ得ない、そういうもの。

マサコさんがトランクを開けたとき。
サチエさんがプールでつぶやいたとき。
魔法が訪れる。
不思議だけれど、驚かない。こんなことが起こるのを、知っていた気がする。


何事も起こらなさ加減とか、人物のバックグラウンドの説明のなさとか、文鎮を置くようなポコッとしたオチの持ってき方とか、えらく肝が太いっつーか、腹が据わってるつーか、体幹のしっかりした印象。

論理的ではなくって、非常に直観的。
説明のつかない事象や言葉にならない思いをイメージとしてとらえ、言葉ではなく、イメージで思考してるのではないかと思います。






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