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「平成狸合戦ぽんぽこ」 [映画]

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メッセージ色が強くって、たいへんダサい。ウザい。スマートではない。
勘弁してほしいくらい、ストレートな主張。
でも、ここまで直球でやられちゃうと、降参です。

凄絶。
壮絶。
きれいごとじゃない。
命がけの凄まじさ。

だって、要するにこの話、ジェノサイドでしょう。皆殺しじゃないすか。
アウシュビッツで、ルワンダで、カンボジアで、トルコで、ニカラグアで、パレスチナで、シエラレオネで、東ティモールな話です。
主人公の狸たちを人間に置き換えて実写にされちゃったら、ハンパない厳しい描写を覚悟させられるに違いない。

その、凄惨で残酷ともいえる物語を、ですよ。
ひたすら軽やかに、愉快に、鮮やかに、楽しく描き出してしまう。
その描写の美事なこと。
“妖怪百鬼夜行”の、生き生きと活力に満ちた、豊かなイマジネーション。
絢爛な宝船に扮した“阿呆船”の切ないお祭り騒ぎ。

へらへら笑いながら、狸たちは敗け続ける。
徹底的に、完膚なきまでに叩きつぶされる。
しかも敵である人間には、最後の最後まで伝わらない。
抵抗の意志どころか、“抵抗勢力”とすら認知されないのだから。
徹底的なディスコミュニケーション。

ラストシーンは必ず泣いてしまう。
鮮やかに蘇る里山の風景は、単なる田舎礼賛とかノスタルジーの甘ったるさを超えて、胸に迫る。


とにかく押し付けがましくって、実に不格好な映画だと思うんだけれど。
何かを伝えようと思ったら、本当に必死で表そうと思ったら、不格好にもがくしかないのかもしれない。

心打たれる。
とても、切ないです。





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