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「海がきこえる」 [TV]


海がきこえる

海がきこえる

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メディア: DVD



なんでもいいからドカーンとやってみろよ、みたいなことを期待されて、120点か0点なら「よくやった」って言われそうなところを、80点とかそこそこな点数を取っちゃう優等生、みたいな。

ものすごく丁寧で、気合いの入った仕事なんだろうと思う。
風景も人物もすごくきれいだし、破綻もなく粗もない。
ただ、なんかこう、はみ出したらいかん、みたいな優等生っぽい臆病さを感じてしまう。
そつのない、無難な仕上がり。
淡々と、体温とか生気みたいなものが稀薄で、原作でハジけていた里伽子の瑞々しさが失われていて、物足りないのだった。
丁寧に整えられた、エリートの青春。小さくまとまっちゃったね。

そうは言っても、クオリティが高いアニメーションであることは間違いない。
あれこれ不満を述べたけれど、なにが足りないのか、具体的にはよくわからない。
それに、個人的には製作スタッフの心情を理解できるような気もする。
ずっと、失敗を許されずに仕事してきたんじゃないのかなあ。
いきなり冒険してみろって言われても困惑してしまうだろう。

失敗が許されないような状況で仕事をさせられる、しかも芸術や娯楽において冒険が躊躇われる状況ってのは、文化程度が貧しい証拠だと思う。

それでも、この作品が製作され得て、今もレンタルして観ることができるっていうことは結構なことだと思う。
バブルの遺産としては、かなり上等の部類に入るだろう。
土地やビルや倉庫にしまっとくだけのゴッホに金を注ぎ込んだりしないで、「海がきこえる」みたいな試みを、もう10回くらいやっといたら、随分違ってたんじゃないかなあ。
アニメだけじゃない、実写映画も含め、詩歌小説、歌舞音曲、美術工芸、あらゆる芸術の育成に、あの馬鹿馬鹿しい金が使われていたなら。
優等生たちの気負いを、少しははたき落とせたかもしれないじゃないか?

バブルの遺産。或いは、かつて日本がとてつもなく裕福だったわりにとてつもなく文化程度が貧しかった時代の思い出として観ると感慨深い。
↑我ながらつまんない皮肉。


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