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「イノセンス」 [映画]



「攻殻機動隊」の続編的な位置づけ。「攻殻」にもまして、台詞の難解さがパワーアップしててかなわんので、つい字幕onにしちゃったよ。
登場人物はみんな電脳化してて、常にデータベース検索できちゃったりするもんだから会話の端々に箴言・格言・名言の類を引用しまくりまくる。誰のどんな言葉を引用してみせるかってことに人物の個性やセンスが出るみたいでおもしろい。しかし疲れる会話だ。

全体に漂う、重さ暗さタルさは「攻殻」に引き続き相変わらず。北端の択捉(えとろふ)都市郡とかお祭りの場面とかぎらぎらのぎゅう詰めのすんごい密度で迫ってきて重い重い。

特定のメーカーのガイノイド(アンドロイド)が所有者を襲って自壊する、っていう事件が立て続けに起こって、公安9課が捜査に乗り出す。
このガイノイドっていう、主に愛玩用のロボットは見た目は球体関節人形そっくりで、ていうかハンス・ベルメールの人形写真も思いっきり引用されてて、人形そのもの。
人の似姿としてつくられながら人と隔たった生命のあり方、というか生命の無いあり方が、翻って人の生命のあり方を反射する。人形の生命論が、上述の箴言引用固めの会話のやりとりにちらちら仄めかされ、なんかもーかなわん感じにスノビッシュ。

人形の躯体、空洞の筐体の画ヅラがすんごい印象的。バカッ!と開くのね、外殻が。顔とか胸とか、人の似姿、人のかたちが、一瞬で外殻の残骸になり、中身がさらけ出される。
人みたいだけど人じゃないものの存在感、どこまでもオブジェなモノ感がごんごん迫ってくる。翻って、自分の身体ってことを強く意識させられるように感じた。

伊藤計劃が、
「イノセンス」はその「殻」の物語、「GHOST IN THE SHELL」ならぬ、「SHELL OF THE GHOST」の物語だ。(p.385「伊藤計劃記録」早川書房)
って書いてて、なるほどー、と得心。

だとすると「イノセンス」は言葉じゃない、理屈じゃない。箴言引用固めの台詞尽くしにも意味はない。体は言葉を持たないから。
ただひたすら人形の体、翻って人の体の身体感、カラダ感をがっつり確認させられるつくりになってんのかなー、などと思った。







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コメント 2

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タニプロ

押井は最近実写に色目が出てますね。

関係ないけど、これちょっと酷い(笑)↓

大沢たかおのあなたに朗読
http://www.rodoku.jp/index.html?id=64780f2365302389fd75c8c9629a81aa

あと時期を逸しましたけど、ゼロ年代ベスト全一覧もうちょっとお待ちください(苦笑)
by タニプロ (2010-04-02 16:14) 

シロタ


タニプロさん、毎度おこしやす。

押井守はその評判とは裏腹に、アニメ表現への嗜好、必然性はそんなに強くないのかなーと思いました。うん、実写もイケそうですね。

>大沢たかおのあなたに朗読
妙なもんあるんですねえ。ていうか「違いがわかる男」ってギャグとしか思えないですけどね、昔っから。

そうそう、関係ないけどようやく「スターシップトゥルーパーズ」観ました。噂に違わぬすげえ怪作ですね。こんなに健やかに死ねとか殺せとか言っちゃっていいのかなーと思いつつ、死ねとか殺せとか言いながら観ました。うんw

by シロタ (2010-04-04 03:20) 

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