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「キック・アス」 [映画]

失敗orz
鑑賞に臨む姿勢を完っ全に誤った。
「スコット・ピルグリム…」のノリを引きずったまま、すっとこ主人公のおポンチコメディな期待全開で臨んでしまい、存外な残虐っ子の毒気を無防備に食らってダメージ甚大。

ていうか、ド単純に正義をキめるヒーロー=英雄が成立しづらくなった昨今、ヒーローといったらネタかシャレ扱い、往時のヒーロー様たちの独善的正義をおちょくった仕様じゃないですか。大抵は。
または、特殊能力者故の孤独とかいち個人で負う道義的責任の重さに苦悩しまくりな、英雄物語の体裁をしたサンデル白熱教室だったりとかさ。


冒頭は確かにおポンチだった。
英雄になりたいオタクでヘタレでのび太なへっぽこ主人公が、憧れでおさまらずにコスプレ、成り切ってヒーローしようとしてボコられ、おまけに意中のあのコにゲイと勘違いされる、とか、イタさに身悶えしながら笑える展開。
ユルピタなサイズ感が絶妙過ぎるキックアス・スーツ、微妙なしわとたるみがリアルクローズなコスチューム姿で街ん中ほてほて猫背歩き、あの画ヅラはひじょーに安定したおポンチ加減ですだよ。

で、そこへもって残虐っ子・ヒットガール様ご光臨。
笑えねえ。笑えねっす。
チンピラ悪党の胸からしゅぱーん!て刃が生えるwith血しぶき、ていう華麗な登場シーンで凍りました。瞬間凍結。
いやそれまでもなんか物騒な気配はあったけどさ。
それでも、この子のまったく躊躇いのないぶっちぎりな残虐ぶりに、この先どう観ればいいのか完全に見失ってしまいましたのですよ。
その後もどうにも体勢を立て直せず、困惑の極み。


ヒットガールとビッグダディの躊躇いなさは、往時のヒーロー様たちのド単純な独善的正義への痛烈な皮肉、ていう読み筋じゃないんですか普通は。
年端もいかない子どもがヒーロー気取りでハンパない大量虐殺、なんて真っ黒い皮肉だよ痺れるぜ、と思いきや、なんかコレもしやまさか皮肉じゃなくてマジなんですか。
「本物のヒーローだ…(憧)」
って、ええええええわからん。
ヒットガールがヤバさ極まる勘違いバカとして扱われないのがまるでわからない。

もうなんかこの際「キル・ビル」とか「デスペラード」ばりに正義とかどうでもいいバカ暴力だと思えばいいのかもしんない、と思いつつ、全然立て直せず。
(つか、「キル・ビル」も「デスペラード」も正義を標榜したりしないし。むしろ正義に立ってないことをこそ強調してるし)


それに困ったことに、ヒットガールの殺戮シーン、めっさカッコいいんですわ。
小柄で軽い子どもの体格を活かして身軽に攻撃をかわすのはもちろん、思いがけない身のこなし、巧みな武具の扱いで厳ついオヤジ多数を子ども一人でさっくさくやっつけてく
見惚れるほど爽快にカッコいい。
でも、このコがカッコよくていいのか納得しがたいままカッコよいので、そのズレがどうにも気になって気持ち悪い。


でもって主人公キックアス・デイブ。
「どうして誰もヒーローになろうとしない?」
「金持ちや超能力者じゃなければヒーローになれないのか?」
「何もできない、といって傍観してるのが許せない」
とか、世界に対する当事者意識、自ら主体的に世界に関わっていこうとする態度が彼を主人公たらしめているわけなんですよな。
なので、キックアスは、前半でボコられながら車泥棒や暴漢を防ぎ、彼の力の能う限り正義を為した。
すっごく頑張ったじゃないですか。
で、そのことは確実に彼の世界を変えた、すごいことなはずなんだけど、なんかけしトんでる。
あれが大事なんじゃないの?

その後ヒットガール登場以降、キックアスってヒーローらしきこと何もしてなくね
「能力がなければ責任がないのか?」
と、ご大層な決意でヒットガールに助太刀するけど、そのジェット付きガトリング砲ってオマエの能力じゃないだろうがよ……。

あ、あとさ、ビッグダディの元相棒のマーカスって完っ全に傍観者なんだけどオマエ警官だろ何しに出てきてんのアレでいいのバカなの死ぬの。


やっぱりなんかヘンだこの映画。
ヒットガールの正義が疑わしい上に、キックアスの態度のズレも重なって、なんかこう、いびつな印象を拭えない印象でござった。

殺戮シーンのキレとか無闇なカッコよさとか、妙な勢いはあるんだけど。







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タニプロ

ヒットガールのクロエちゃん、最近の写真ではもうすっかりオトナみたいになってました。

関係ないけどブログに最近聴いた音楽のことでも書いてみたんで、なんか聴きたいのあったら参考にしてください。
by タニプロ (2011-06-19 23:40) 

シロタ


タニプロさん、どーも日々お疲れさまです。

そっか、撮影時から結構年月経ってるでしょうからね。
随分印象も変わる年頃なのかもね。
ていうかヒットガール主人公にしてパート2をつくるとかいう話もあるらしいですがどうなんすかね。


音楽の紹介もありがとう。
関係ないけど「トロン・レガシー」の音楽ってカッコよかったですね。
DAFT PUNK?って全然知らないんですけど、タニプロさん詳しそうな気がしました。



by シロタ (2011-06-20 20:36) 

タニプロ

DAFT PUNKは、アルバムでデビューする前からずっと好きです。リミックスとかしてたんですが、もうその時点で天才的でした。確実にダンスミュージックを変えました。ライブ行ったこともありますが、それも画期的でした。

今聴くと新しくも何ともないですが、ファーストアルバム聴いたときは心底震えました。ファーストの方がシンプルでミニマル、セカンドでポップになったと言えるかもしれません。全て好きです。

彼らはユニットなんですが、DAFT PUNK以外の活動で片割れが「STARDUST」という名義で「MUSIC SOUNDS BETTER WITH YOU」という曲を出していて、これも傑作です。

DAFT PUNKを脅かしそうなのが、「JUSTICE」というユニットです。もうすぐ新作が出ます。
by タニプロ (2011-06-22 22:08) 

シロタ


おお、さすが! やっぱりお詳しいですな!

JUSUTICEてなんか名前を聞いたことあります。
今度試してみます。


by シロタ (2011-06-24 18:51) 

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