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「アギーレ〜神の怒り」「フィツカラルド」 [映画]

毎度ひいきの早稲田松竹にて二本立て。

この2本を続けて観られたのはよかった。
どっちも南米のジャングルが舞台でクラウス・キンスキーが主役なのが共通するだけでなく、テーマが近接してる感じ。
裏表つーか明暗ていうか、「アギーレ」→陰、「フィツカラルド」→陽、みたいな。


「アギーレ〜神の怒り」
大航海時代の南米が舞台。
初っぱなから、すんごい山道を甲冑姿のスペイン人+先住民族の奴隷がぞろぞろ行軍する。
ハンパない山道だし、ジャングルの樹木は豪快に繁茂してて盛大に歩きづらそうなのに、軍隊だけでなく、スペイン人が連れてきてる娘とか愛人とか、いかにも高貴な女性たちが場違いなドレス着て輿に乗っけられてえっちらおっちら運ばれてたりして、その場面がけっこう長々続く。
これだけでも、きみらアホですか、て言いたくなるけども、まあそれは現代から見ての感覚なのかもね。

しかし、道は険しいし川の水でビタビタだし食糧も尽きてきたしエルドラドは見つからねーし、で、別動隊を組織してエルドラド探してこい、ってその別動隊の副隊長がアギーレさん。

その後、川が荒れたり先住民族に襲われたり食い物も乏しく、どんどん状況は厳しくなるにつけ、アギーレがおかしくなってくる。
いきなり隊長にぶっ放し謀反り、スペインから離脱してエルドラド新帝国つくっちゃうぜとか言い出して大暴走。

上述の、きみらアホですか、な感じが、どんどこ増大してく。
現代人から見て当時の人たちの習慣とかがヘンに感じる、ていうのではなく、明らかに、エルドラドとかそんなもんオマエの脳内にしかねーわ目ぇ醒ませやあんたアホですか、的なヘンさ・狂ってる感。

特に、アギーレ(クラウス・キンスキー)の顔、薄い目の色とかパーツのデカい顔立ちとかが迫力で、イッちゃってヤバい人全開な表情がすごい。

でもってしまいには、森ん中から姿の見えない先住民の毒矢がひゅんひゅん飛んできてざくざくヤられ、熱病が発生し皆さん息絶え絶え、アギーレの娘もざくっとヤられ、アギーレだけがしょぼい筏の上で俺は怒る神だ、と猛る。 なんでかいきなりリスザル大量発生してみたり。実は死んでんのに気づいてないアギーレ、とかそういうふうにも見えた。

すごい迷惑で凶暴なアホの話。



「フィツカラルド」
こっちも盛大な“あんたアホですか”な映画。
ただ、「アギーレ」の“あんたアホですか”が、ヤバい人に対する恐怖・忌避だとしたら、「フィツカラルド」のそれは愛すべき変人に対する好意・称賛みたいな感じ。

19世紀半ばくらいかな、南米の植民地の話。
フィツカラルドはオペラ狂いで、いずれ金持ちになって開拓地にオペラハウスをつくるぜ、ていうドリーム全開な山師。
デカい商売に手を出すも失敗して破産したりしてて、周囲はハイハイワロスワロスでスルー気味。

フィツカラルドは愛人に金借りて船を買い、天然ゴムで一発当てようと、それまで条件が悪くて誰も手を出さなかった土地に向かう。
で、生産したゴムを運搬するために? 越えたとこでゴム生産するために?(このへんちょっとよくわかんなかった)、船を引っ張りあげて山を越える、ていうトンデモな難事業に挑む。
言葉や文化習慣が違っててよくわかんない先住民たちがよくわかんないけどなんか理由があるらしく手を貸してくれて、木を斬って山を崩して滑車で引いて船が山登り。

船って、ヨットとか小型クルーザーみたいなんじゃなく、全長30mくらい(もっと?)はあんのかなあ、フツーにデカいのな。
そんな船が斜めに傾いてじわじわ上がってくる with 船のてっぺんに据えた蓄音機からオペラ大絶唱ていう、むちゃくちゃな画ヅラ。
本当に本気で木斬ってダイナマイトで砕破して、人力でロープをぐりぐり引いて引き上げちゃうんすよ。この場面はドキュメンタリみたいなリアル感。

手を貸してくれる先住民sが徹底して他者で、まるで訳がわからない。
何いってるかわからないし、どういう反応をするかまるでわからない。怒ってんだか納得してんだかもわからない。
急に居なくなってみたりまた戻ってきたり、まる二日も川を見つめ続けてみたり、普段赤く塗っている化粧を黒い戦化粧にしたり。
で、そのことについていっこも説明なし。わかんないまんま。
そういう感じ、すんごくおもしろかった。

どうにかこうにか山越え敢行、大金持確定かと思われたときに、先住民sにより船は急流に突っ込んで損傷。商売は失敗。

フィツカラルドはなけなしの金はたいて、オペラ歌手&演奏者を都市から呼ぶ。
損傷して傾いた船の上でのオペラ(「清教徒」ていう演目らしい)、ボロボロのスーツの上から燕尾服ひっかけて上等の葉巻ふかしつつ佇むフィツカラルド。
この場面がクる。ジーンと胸アツ。

フィツカラルドは赤い天鵞絨張りの椅子を注文したんだけど、それが豚のため、ってのがくだらなくってイイ。成し遂げたことが立派じゃないとこが偉い。
キーキー鳴くちっさい黒豚が天鵞絨の椅子にちまっと収まって仰々しいオペラを聴く、ていう画ヅラを想像するだけでアホ楽しい。

なんてラブリーなアホであることか(詠嘆)



というわけで、
傍迷惑で凶暴で最悪迷惑なヤバさ極まるアホの話→「アギーレ〜神の怒り」
と、
傍迷惑で最悪迷惑なんだけどなんか憎めないアホの話→「フィツカラルド」
でした。
けっこう紙一重なんだけどね。その紙一重の差がデカいんだろうなー。







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