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「かがやく日本語の悪態」川崎洋 [書籍]

なんつってもタイトルが秀逸。かがやくのだぜ、悪態が。ステキだ。
だいたいが、悪態、って単語からしてウキウキワクワク、キラーンて漫画みたいに目が輝いてしまいますな。(そうか?)
悪態、罵倒、罵詈雑言の類いって大好き。

至極真面目に、日本語表現の多様性や可能性を追求する意図で歌舞伎や落語、文学や方言における様々な悪態を集めてある。なるほどねーって蘊蓄本的なお楽しみ。
卑猥な語や差別語は避けてあって、なので、わりと穏当な印象。たぶん著者の言語センスのあらわれなんだろうけど、性とか差別とかの構造的背景を前提/後ろ盾にした言い回しじゃなくって、あくまでも対等の立場で罵り合う表現に注目してると思う。
勝負は己の知性とセンスのみ、権力や暴力を恃むのは格好悪いぜ。的な。

「悪態採録控」っていう本も出てて、これは上述「かがやく…」の資料版みたいな感じ。
落語の活き活きした語り口とか、歌舞伎の台詞なんかは、こーいうのすらすらーっと啖呵きれたら気持ちいいだろうなー的な、的確な表現力に感服。わたしが好きなのは助六の悪態、「鼻の穴ぃ屋形船蹴込むぞ」ってやつ。無茶苦茶でよいわー(笑)。
文学の例では漱石の「坊ちゃん」とか井上ひさしの「吉里吉里人」に随分紙幅を割いてる。「吉里吉里人」すげえ。
川崎洋は方言にも造詣の深い方言コレクターなので方言の悪態も幅広く採録。


ところで、悪態とか罵倒の類いとなると、わたしとしては佐藤亜紀さまの著作を外せない。
例えば、「でも私は幽霊が怖い」所収の“一九九五年一月の日記”、原発を貶すくだり、218頁。

 こんな馬鹿げたことを思い付いた奴の顔が見たい。人類の恥曝しめ。アルファ・ケンタウリの住人に知れたら何と言って後ろ指をさされることか。あいつらわざわざ核分裂のエネルギーを使ってさ、それでお湯沸かしてさ、湯気で輪っか回して電気起して、で、やっと使ってるんだぜ。ばっかじゃねえの。
 ああ、恥ずかしい。コズミックな恥曝しである。

ボッコボコだ(喜)。
他にも同書籍所収“ストーカーを殴り殺そう!”なんか腐す相手が相手だけにぎたんぎたんのメッコメコ(狂喜)。
amazonか読書メーターか忘れたけど、“スマートに鈍器を振り回せる人”と評した方が居て、その形容がぴったりのドハマり、クールなボコりっぷりがステキ過ぎ。




   


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