SSブログ

「バベル−17」サミュエル・R・ディレイニー [書籍]

ひきつづき、笙野頼子もくもく読書中。今まで手に取ったこともない「現代思想」とか「文藝」まで無理して読んで脳が痒い。オーバーヒート気味。

ていうようなところで、言語の政治性とかその危険性、なんていう語がやけに目について、んで、思い出したのがコレ。
1966年ネビュラ賞受賞のSF小説。


インベーダー(っていうかよくわかんない敵の宇宙人)が攻めてくるときに傍受されるナゾの通信、バベル−17と名付けられた暗号みたいなものがあって、主人公の詩人、リドラ・ウォンはそれを解読、暗号というよりは一種の言語だということを発見する。

このバベル−17ていう言語の特徴がおもしろい。ものすごく簡潔で合理的な言語で、リドラはバベル−17を用いて思考すると大変に素早い判断が出来る。その際、他言語(主に英語)での思考がもどかしくまどろっこしく感じられ、その感覚が高じて時間がゆっくりすすむような感覚、スローモーション効果に至る。

他にも、シリビア星人て異星人の言語が、熱と温度変化を表す表現に異様に特化していて、英語なら図面びたびたの専門書2、3冊かかって説明しなければならない機器の説明をたった9語で正確に表せる、なんていう描写があったりして、言語っていうものの性質・特徴が、SFな設定の中でとても極端に、先鋭的に表されてる。おもしろい。興味深い。


リドラはバベル−17の源泉、それを話す者をつきとめるために宇宙船に乗り込んで探求・冒険の旅に出る訳なんだけれど、その宇宙船内で起こるトラブル、スパイが忍び込んでいる疑い、などなどがスリリングに錯綜する。
そして、バベル−17の性質が明らかになると、見えない敵の姿、意思みたいなものがその言語にあぶりだされるように暴き出され、一気に謎が解ける。このくだりは、パズルのピースがパチっとはまるみたいな知的興奮、カタルシスが快い。

ちなみに手元の版は’98年13刷、初版は’77年。息の長い小説。
おもしろい。





コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。